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病気のコラム

2022.10.14

アトピー性皮膚炎の治療に関して

アトピー性皮膚炎の治療に関して

私も幼い頃アトピー性皮膚炎を患っておりました。なぜ、周りの友人達には無い煩わしい皮疹が自分にだけあって、お薬を塗っても塗っても繰り返し出てくるのかと悩んだ時期もありました。意中の人が出来た際にも皮疹のせいで臆病になってしまったり、友人と旅行先で風呂に入る際にも皮疹のことが気になってしまったりと、病気の重症度以上に、精神的な影響が非常に大きい疾患です。外用薬は確かに効果がありますが、毎日テカテカベタベタになるので医師の指導通りに定期的に外用する気にはなれず、私は自分で我流に治療をしていました。皮膚科医となった今でも、この経験を思い出しながら、患者さんとなるべく対話をして、その方の生活や理想に合う形の診療を提案するようにしています。近年、注射剤としてデュピクセントやミチーガ、内服薬としてオルミエントやリンヴォック、サイバインコ、外用剤としてモイゼルト、コレクチムなど新薬の登場が続いており、患者様の中には知らなかったという方も多いですので、少しまとめてみたいと思います。

・アトピー性皮膚炎の治療

・ステロイド外用剤に関して

・ステロイド外用剤の副作用とは

・新しいアトピー性皮膚炎の治療に関して

・まとめ

アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療には、大きく分けると、外用療法、内服療法、紫外線療法がありました。近年ここに皮下注射剤であるデュピルマブ(デュピクセント)、ネモリズマブ(ミチーガ)と新たな内服療法であるJAK阻害薬:バリシチニブ(オルミエント)、ウパダシチニブ(リンヴォック)、アブロシチニブ(サイバインコ)が加わりました。外用療法でも、デルゴシチニブ(コレクチム)、モイゼルト(ジファミラスト)といった新薬が登場しています。治療の基本となるステロイド外用剤とともに新薬にも少し触れてみようと思います。

ステロイド外用剤に関して

べたべたとして煩わしい軟膏剤が多用されるわけですが、これは新薬の登場してきた今であっても変わりません。ステロイド外用剤が治療の中心であり、まだこれを代用できるような経済的で比較的安全に使用できる薬剤がないとも言えます。適切な外用量、外用方法による治療効果は本当に切れ味も良く効果的です。ですが、どうしても皮膚に薬剤を到達させるために油分が必要で、外用によってベタ付きやテカりがでてしまいます。外用剤でテカりがある状態で登校・出勤するのは見た目からも躊躇されるという心理的な側面はもちろん、携帯電話画面が軟膏のせいで油っぽくなってしまったり、新しく買った本などに油染みができてしまったり、外用剤のストレスというものがついて回ってきます。また、副作用が気になるという患者さんが多いです。

ステロイド外用剤の副作用とは

日本は世界でも特にステロイド忌避といって、ステロイドを使いたくないと訴える患者さんや、中長期の使用を懸念される方が多いと言われています。ステロイド外用剤の副作用としては、①長期の外用で毛が濃くなること、②皮膚が薄くなること、③毛包炎、ニキビの悪化やとびひ、ヘルペス感染症など感染症が悪化する可能性、④顔や首、前胸部といった箇所でステロイド酒さ(酒さ様皮膚炎:毛細血管が目立ち、皮膚の赤みがとれなくなる)が挙げられます。近年、研究が盛んになってきている皮膚のバイオーム(皮膚や腸管の表面にどのような常在菌がどのようなバランスで住んでいるかという、今まで体質という言葉で片付けられてきた個人差に迫る一つの研究分野)には、影響を与える可能性が高いように個人的には思いますが、それによってデメリットがあるのかなどの研究はこれから進んでくると思います。

患者さんがよく誤解されている副作用は、皮膚が黒くなるというものです。これはステロイド外用剤とは関係なく、一度炎症を起こして赤くなった皮膚はかならず茶色い色を経て肌色に戻っていくという特性があるためです。重たいアトピー性皮膚炎の患者さんは、赤い炎症のある肌でいることが多く、外用薬で炎症=赤みを鎮めてあげると、炎症後の色素沈着という茶色い色が一時的に目立つ時期があります。これは、湿疹のコントロールを良好に保てば、次第に肌色に戻っていきます。また、ステロイドの「内服薬」には多くの副作用があるため、混同されることもあるようです。

新しいアトピー性皮膚炎の治療に関して

近年は、多くの病気で疾患の原因となる化学物質や受容体、伝達経路、細胞自体を狙い撃ちにするような治療薬の開発が続いております。特にアトピーを含む炎症性疾患の治療というのは、人の体に必要な菌やウイルスを倒すための炎症=免疫は残しつつ、体にとってデメリットとなるような湿疹やかゆみ、痛みの炎症は抑えるという針の穴を通すような調整が求められるわけで、こういった細かな化学物質を狙い撃ちにする手法が活きる領域です。

デュピルマブ(デュピクセント

2週間に1回、皮下注射として投与する薬剤です。15歳以上の方に適応があります。注射剤ということで躊躇される方もいらっしゃいますが、比較的安全性も高く、このお薬の使用でアトピー性皮膚炎の皮疹が劇的に改善して生活が一変したという方もいます。一方で、やはり高額な薬剤であるため、高額療養費制度や付加給付、自治体からの医療補助などをうまく利用して治療継続している方が多いです。

ネモリズマブ(ミチーガ

4週間に1回、皮下注射として投与する薬剤です。13歳以上の方に適応があります。こちらも注射剤です。登場して数か月の新薬ですが、治験の結果などから安全性は高いと考えられます。デュピルマブがカバーできない13歳、14歳にも使用が可能で、かゆみを止める効果が非常に高いお薬です。強い掻痒感で勉学に集中できないなどの症状があれば良い適応と考えます。こちらも高価な薬剤となりますので、医療費助成制度などをうまく利用しながら投与継続する方が多くなると考えます。

JAK阻害薬:バリシチニブ(オルミエント)、ウパダシチニブ(リンヴォック)、アブロシチニブ(サイバインコ

1日1回の内服薬になります。15歳以上から使用可能な薬剤と12歳以上から使用可能な薬剤があります。内服薬ということで利便性は非常に高い薬剤で、治療効果も高い薬剤になります。安全な内服継続を担保するために胸部CT撮影や採血による定期的なモニタリングが必要になります。また、こちらも高価な薬剤となりますので、上記で紹介してきた薬剤と同様に、医療費助成制度をうまく利用して治療継続している方が多いです。

外用療法の新薬:デルゴシチニブ(コレクチム)、モイゼルト(ジファミラスト

ステロイドではない外用剤として、近年2剤が登場しています。外用剤としては、1999年にタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏)が登場して以来の新薬になります。タクロリムス軟膏も中長期継続外用による副作用が少ない非常に良い外用剤でしたが、外用後のほてり、灼熱感で一部の方では使いにくいという状態がありました。デルゴシチニブ、モイゼルトともにステロイド外用剤よりも副作用が少なく使用できる薬剤として期待されています。炎症をぐっと鎮める治療の切れ味は、やはりステロイド外用剤に軍配があがる印象はありますが、使用薬剤の組み合わせや薬剤の移行などを駆使して、ステロイド外用剤の中長期外用の副作用が出ないように皮疹をコントロールしていけるようになっていくと考えます。

まとめ

近年、新薬の登場が続いているアトピー性皮膚炎の治療について触れました。長い期間罹病している方では特に治療に対しての諦めのような気持ちがあると思いますが、現在自分が受けている治療法以外の治療がないかなど、積極的にご相談ください。

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